『災害弱者』という言葉をご存知でしょうか。
災害弱者とは、災害時に自力での避難が通常のものより難しく、避難行動に支援を要する人々を指します。
具体的には、下記に該当する方です。
- 障害者(視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者、知的障害者、内部障害者)
- 傷病者
- 高齢者(認知症や体力的に衰えのある者)
- 乳幼児(健康であっても、理解力や判断力の乏しい者)
- 妊婦(健常者と比べて重い保護を必要とする者)
- 外国人(日本語がわからない者)
- 旅行者(その場所の地理に疎い者、外国人も含まれる)
では災害弱者は、どのようなことに困るのでしょうか。
まず、災害弱者は大きく2つに分けられます。
- 災害の状態や避難を行うための情報を得ることができない、または困難な者。避難情報を得ることや理解ができないため、適切な避難行動に結びつかない。
・具体的には、聴覚障害者、視覚障害者、知的障害者、認知症の高齢者、乳幼児、外国人
- 災害の状態や避難を行うための情報を得ることができるが、自身で避難することができない。または困難。心身に行動制限があり、物理的に避難を行うことができない。
・具体的には、身体障害者、高齢者、乳幼児、妊婦
つまり、自身で避難することができない、または困難な災害弱者の避難には、同じ地域にいる災害弱者ではない余裕のある者の支援が必要不可欠といえます。
しかし、支援や救助の大前提として、ニ次災害(支援者や救助者が直接的または間接的に被災すること)は決して避けなければなりません。
災害弱者の避難支援や救助を行う際には、支援者や救助者が事前に《避難が完了するまでの時間》を把握しておくことが重要だと考えます。
《避難が完了するまでの時間》に影響する要素
- 災害状況
- 災害弱者の身体機能、精神状態
- 避難場所までの距離や経路
- 避難方法(搬送方法や支援者の体力・人数など)
- 避難道具の取り扱い理解度
課題
災害弱者を避難所まで効率よく避難をさせるには、支援者や救助者の安全の確保と災害弱者となる要因の特性や避難道具の取り扱い方、避難方法や経路などの知識、また支援者や救助者の体力や経験などが必要です。事前の《災害弱者対策訓練の実施》や近隣の《災害弱者宅及び人数の把握と共有》を行うことで、支援や救助を想定することができ、また避難を行う過程で障害となる状況があれば、それらを改善するための対策を取ることもできます。
私たちが暮らす藤沢市では、配慮すべき災害が地域によって異なることから、防災・避難訓練のあり方や内容は各自治会に委ねられています。つまり、自治会の災害に対する意識の高さや実行力によって、防災・避難訓練の内容は大きく変わってしまうのが現状です。また、災害の中で想定される状況は無数にあるため、慣例化された最低限の訓練を行っている自治会も多いように感じます。この点は、市が各地域の起こりうる災害に対し、必要な機材の準備や訓練内容をもっと主導して行うべきだと考えます。
また、災害弱者対策訓練は、健常者だけではなく、健康への負担を配慮した上で、災害弱者本人の参加を増やしていくことも大切です。支援者や救助者、そして、災害弱者のリアルな経験の共有が、相互理解や避難方法の技術の向上につながると思います。
もう一つの課題は、避難先からすぐに帰宅することが困難な大災害の場合、常時服用しなくてはならない薬、または、普段の生活に必要不可欠な医療器具などは、避難先で入手するのは非常に困難な状況といえます。該当する災害弱者は、薬や医療器具を普段から備えておく必要があるのではないでしょうか。
- 近隣に住む災害弱者宅の及び人数の把握と共有
- 市の主導による災害弱者対策訓練の実施
- 災害弱者の災害弱者対策訓練への参加
- 常時服用しなくてはならない薬、または普段の生活に必要不可欠な医療器具などがある災害弱者は、避難先で薬や医療器具が手に入らない状況を想定し備える
まとめ
地震や台風。私たちの暮らす日本は世界の中でも言わずと知れた災害大国であり、過去に多くの被災を経験して来ました。しかし、その災害が、ときには恵みをもたらし、日本人の自然に対する畏敬の念や共生の心、謙虚さや調和を基調とした考え方を育んできたとも言えるのではないでしょうか。
私たちの周りにはたくさんの災害弱者がいます。しかし、その多くが自分自身では避難することが困難であり、支援を必要としている方達です。また、災害弱者は特別な存在ではありません。誰もが怪我や病気、妊娠や旅先で災害弱者となることがあるからです。
誰が災害弱者であっても、孤立せず避難を行えるような社会をつくるには、私たち一人ひとりの《他人事としてではなく自分事として捉え解決方法を見いだす心(心のバリアフリー)》がとても大切ではないでしょうか。
災害弱者対策訓練など取り組むべき課題はたくさんありますが、災害が育んでくれた日本人の精神が、災害弱者避難の問題解決に大きく前進するきっかけになることを期待します。