経済安全保障とは比較的新しい言葉です。意味は、軍事力ではなく経済的活動により合法的優位性を保つと言ったところでしょうか。
トランプ政権下での経済的米中摩擦により表面化されました。
それまで中国は安い人件費を武器に世界のサプライチェーンとしての地位を確立してきました。しかし、それらが自国の軍拡を目的とした計画的かつ狡猾的な国策だったとしたらどうでしょうか。
軍事転用のできる情報を手に入れるために、その国の親中派と言われる人を巧みに操り潤沢な資金をチラつかせながら企業や大学に忍び込ませ、中国依存を強めていたことが認定されています。そして、未だ我が国では続いています。
私が学生だった頃、中国の印象はまだまだ発展途上国としての印象が強く、対中ODA(政府開発援助)を受けている国といったものでした。当時の人々は誰一人として、たった25年の間に今のような中国に変貌することを予想できなかったのではないでしょうか。
ちなみに、対中ODAは中国で改革開放政策が始まった1979年より、円借款、無償資金協力、技術協力などを行ってきた政府開発援助です。約40年間の間に拠出した額は計3兆6500億円余り。 2018年度をもって新規採択を終了しましたが、すでに採択済の複数年度の継続案件については,2021年度末で全て終了しました。
なんとも信じがたい話ですが、中国のGDPが日本を追い抜かしても日本政府は中国を援助し続け、また中国の近代化を支えたであろう資金や技術は、感謝されるどころか軍事転用され造られたミサイルを我が国に向けるといった状況になっています。
こういったことは中国だけではなく、実はアメリカも同じようなことを日本に対し長年やってきました…。
話が逸れましたが、現代の戦争は軍事的武力によるものだけではありません。サイバーセキュリティーが甘ければ、国家機密や次世代の革新的技術は簡単に抜かれ再現され、更なる国力の弱体化へと誘導されてしまいます。実際に各国の軍隊の中にはサイバー攻撃や防衛を目的とする部隊が創設されています。
そして情報や技術を奪われ、技術者を金で買われ、競争力を削がれ、企業を買われ、そして土地を買われ、水源を買われ、外国資本が入ってくる。まさに有事ですが、これが合法的な形で行われることになるのです。
ですから、経済安全保障は国の存亡に関わりかねない重要な課題であり、そのための法の整備、国民一人一人の情報リテラシーの向上がいま求められているのです。