「また図書館が閉まる」というニュースを、最近よく耳にするようになりました。全国の公立図書館は、2021年度時点で3,394館と過去最多を更新しています。それなのに、なぜ閉館や統廃合が相次いでいるのでしょうか。今回は、全国で何が起きているのかを整理してみました。
■ 図書館数は増えているのに、利用は減っている
実は、図書館の「数」と「使われ方」は、逆の方向に動いています。
1館あたりの利用者数は、2004年度の約5.8万人から2020年度には約4.2万人へと減少しました。本の貸出冊数も、2010年度の約6.8億冊をピークに、2020年度には約5.3億冊と2割以上落ち込んでいます(文部科学省「社会教育調査」)。
スマートフォンや電子書籍の普及、コロナ禍による生活様式の変化が背景にあります。「館の数は増えたが、一つひとつの利用が薄まった」という状況が、統廃合議論に火をつけています。
■ 統廃合が進む「3つの背景」
統廃合が加速している理由は、主に3つです。
ひとつ目は、国が2014年に各自治体へ「公共施設等総合管理計画」の策定を求めたことです。多くの自治体が施設の総量削減目標を掲げており、図書館もその対象となっています。
ふたつ目は、施設の老朽化です。高度経済成長期(1960〜70年代)に建てられた館が一斉に更新期を迎え、全国の図書館の約半数が築30年以上とされています。耐震補強や建て替えにかかるコストが重なり、「統廃合して新しい館に集約する」という判断が増えています。
みっつ目は、財政難と人口減少です。少子高齢化で地方の税収は伸び悩み、無料で運営される図書館は「収益を生まない施設」として削減対象になりやすい側面があります。
■ 全国で相次ぐ閉館・縮小の事例
2020年代に入り、大都市から地方都市まで、各地で図書館の閉館・集約が動き始めています。
東京都清瀬市では、6館中4館を廃止して駅前の新施設に集約する計画が2024年に決定し(2025年3月廃止)、大きな注目を集めました。東京都渋谷区では区内最古の渋谷図書館(1977年築)が2022年3月に廃止。大阪府豊中市では「図書館みらいプラン」に基づき、庄内幸町図書館の廃止と他2館の縮小が進められています。愛知県常滑市でも、耐震性のない1970年築の本館が2021年に閉館し、公民館等3か所に機能が分散されました。
■ 住民の反対運動も相次ぐ——「決め方」への不満
統廃合に対して、住民が声を上げるケースも増えています。
清瀬市では市民団体が8,000人超の署名を集め、住民投票の直接請求を行いました(市議会で否決)。豊中市でも約1.6万筆の存続署名が集まっています。
注目すべきは、反対運動の争点が「閉館するかどうか」だけではない点です。「パブリックコメントで閉館が明示されていなかった」「説明が突然すぎた」「住民への丁寧な説明がなかった」——こうした「決め方への不満」が各地で共通して上がっています。施設の行方を、住民が知らないうちに決めてしまうことへの批判が根強いのです。
■ 図書館は「本を借りる場所」だけではない
統廃合の議論で見落とされがちなのが、図書館が果たしている「居場所」としての役割です。
誰でも無料で入れる図書館は、高齢者の日常的な外出先であり、子どもたちの放課後の居場所であり、障害のある方が静かに過ごせる数少ない公共空間のひとつです。
2019年に施行された「読書バリアフリー法」のもとで、図書館は点字・録音資料の整備や対面朗読など、障害のある方の情報アクセスを支える拠点としての役割も担っています。図書館が閉まる・遠くなるということは、移動が難しい方にとって「情報へのアクセス権が失われる」ことに直結します。
一方で、複合施設への集約によって利用者が増えた成功事例もあります。神奈川県大和市の複合施設「シリウス」は、図書館を核にして年間300万人超の来館者を集め、まちの中心地として機能しています。「統廃合そのものが悪い」という話ではなく、「どんな機能を、どこに、誰のために残すか」という設計が問われているのです。
■ 藤沢市でも、今後の動きに注目を——南市民図書館の行方
藤沢市は神奈川県内でも図書館サービスが充実したまちのひとつです。そのなかで私が特に注目しているのが、南市民図書館の今後です。
私自身、この図書館をとても気に入っています。もともとは市民会館の隣に併設されていましたが、建物の老朽化に伴い、現在は藤沢駅南口すぐのODAKYU湘南GATE6階に「仮設」として移転しています。
実際に足を運んでみると、その使いやすさに驚きます。駅前という立地のおかげでアクセスがしやすく、学生から高齢者まで幅広い方が訪れています。デパートの中にあることから施設は明るく清潔で、買い物のついでに立ち寄る方の姿も多い。車いすでも不自由なく利用できるバリアフリーの環境が整っており、開館時間も夜8時まで——他の図書館にはなかなかない利便性の高さを、利用するたびに実感しています。来館者の多様さと活気は、「仮設」とはとても思えないほどです。
ところが、この場所はあくまで「暫定」です。将来的には市民会館の再整備とあわせて、元の場所に戻る計画が前提とされています。
私が最も気になるのはここです。「今の使いやすさは、移転後も本当に守られるのか」。駅前という立地が生む多様な来館者層、夜8時までの開館時間、バリアフリーの動線——こうした「今の南市民図書館の強み」が、元の場所に戻ることで失われてしまわないか。障害のある方や高齢者にとって、「駅から遠くなる」「夜間に行けなくなる」という変化は、小さなことではありません。
全国では、住民が知らないうちに図書館の行方が決まってしまうケースが相次いでいます。藤沢でも市民が関心を持ち、計画の中身をしっかりチェックしていく姿勢が大切ではないでしょうか。
図書館は、本を借りるだけの場所ではありません。地域に暮らすすべての人の「知る権利」と「居場所」を支える、大切なインフラです。
■ 藤沢市内の図書館・図書室一覧
藤沢市には現在、4館の市民図書館と11か所の市民図書室があります。蔵書総数は約139万冊(2015年度)で、神奈川県内では横浜市・川崎市に次ぐ規模です。市民一人あたりの年間貸出冊数も多く、図書館サービスが充実したまちとして知られています。
【市民図書館】
・総合市民図書館(湘南台7-18-2)※点字図書館併設
・南市民図書館(ODAKYU湘南GATE6階)
・辻堂市民図書館
・湘南大庭市民図書館
【市民図書室】
・長後/明治/辻堂/御所見/片瀬/遠藤/六会/善行/藤沢/鵠沼/村岡
※各館の開館時間・所在地など詳細は、藤沢市図書館ホームページ(https://www.lib.city.fujisawa.kanagawa.jp/)でご確認ください。電子図書サービス「ふじさわ電子図書サービス」も利用できます。
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