先日、離婚後の親権について父と母の双方が子供の親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした法案が、77年ぶりに参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。
この共同親権の可決は、我が国の離婚による家族や親子の在り方を変える、大きな転換点といえます。
まず、現在まで日本では離婚した場合、未成年の子供の親権はどちらか一方の親のみ認める単独親権となってきました。
しかし、この単独親権が見直されることとなった背景には、制定された77年前と現在では、社会や家族の形が大きく変わっているにも関わらず、頑なに単独親権を維持してきたことによる乖離や一方の親への権利侵害や子供への悪影響など、様々な弊害が生じているところにあります。
またそのことが、国際社会からも名指しで日本は「子供の連れ去り大国」と揶揄されており、単独親権の見直しを強く求められているところによります。
では、単独親権の弊害とはどのようなものでしょうか。
日本の裁判所が、子供の親権の決定を下すため判断基準としているものに『監護の継続性』というものがあります。
これは「子どもの養育状況に問題がないのであれば、それまで養育していた人が引き続き養育することが望ましい」とする考え方です。
実は日本ではこの『監護の継続性』による親権の優位性を得るために、両親の一方がもう一方の親に無断で子供を連れ去り別居し、その後はもう一方の親に子供を合わせず引き離してしまう事例や、一方の親がもう一方の親からDVがあったと
虚偽の申し立てを行い親子の関係を引き裂く事例など、親による悪質な人権侵害と言っても過言ではない子供の連れ去りが横行しているのです。
つまり日本の単独親権制度の現状は、家庭裁判所が別居時に両親によって行われる「子供の連れ去り勝ち」を容認しており、また、これが別居親と子供の面会交流をより困難にさせてる要因となっています。
もちろん、DVが原因の離婚であれば、子供を保護することが最も優先するべきであり、その場合は単独親権が適切だと考えます。
しかし、現在離婚に至る原因や経緯も多様化している中で、未だに親権の85%が母親に渡され、父親が親権を得ることは非常に難しい現状や、離婚後も非監護親との面会交流が子供の権利として保証されていないために、監護親の意思で引き離しが可能な現状は、明らかに時代錯誤と言えるのではないでしょうか。
因みに、「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」(厚生労働省)によると、子どもが非監護親と面会交流をしている割合は、母子世帯でわずか29.8%、父子世帯で45.5%で、半数以上の子供が非監護親と面会交流ができていません。
この様な環境は、子供の成長にも大きな影響を与えます。
先進諸国の研究によると、一方の親から強制的に引き離されることによって、もう一方の親からの愛情が奪われた子供は、片親疎外やうつ状態、あるいは自己肯定感や自尊心が低くく、時には自殺願望を抱いたり、人間関係を上手く築くことが出来ず、問題を抱える要因となることが分かっています。
子供はの成長には両親の愛情を等しく受けることが必要なのです。
例え両親がいくら互いを憎しみあっても、子供にとって親子の間柄は変わることはありませんし、一方の親が正当な理由なく、もう一方の親と子供の間を引き裂こうとしても、このような行為は人として道徳を欠く行為であり子供のことを思うのであれば慎むべきことです。
子供には親に会う権利があります。
親にも権利はもちろんですが、私が思うに、子供を社会通念のある人に育てる義務と、子供を保護し愛を紡ぐ成人となるよう育てる義務があると考えます。
そして、この権利や義務は他人によって簡単に引き裂かれたり、また自身によって簡単に放棄することが出来てはないものではないでしょうか。
我が国での共同親権は2026年度から実施されるようですが、現在よりもより多くの子供が両親の愛情に包まれ、またそれを次の世代に繋ぐことのできる立派な大人が育つ時代となるよう、大いに期待したいと思います。
「元配偶者に子供を取られた」……日本で離婚後の共同親権導入へ(BBC News)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3022bddebf2c877b21b539fb3457e1db6ac60035