【障害の有無に関わらず誰もが孤立しない社会の実現へ】

「誰もが障害者になり得る」

障害者という言葉を聞くと健康的な人には関係のない話に聞こえるかも知れませんが、障害は誰にでもなり得る身近な問題です。なぜなら、高齢になれば多くの方が慢性的な障害を持つようになりますし、若くても突然の発症や事故により障害者となる方も多くいます。そして、大切なご家族が障害者になることも考えれば、決して他人事ではありません。

13人に1人が障害者」

現在、日本には7.6%の国民が何らかの障害を持っています。その数、約950万人。13人に1人が障害者として認定されており、この数はとても無視できる数ではありません。

しかし、私達の国や地域では、障害者に対する理解や社会参加をしやすい環境がまだまだ整っていないように感じます。

「分けられた社会」

たとえば、未成年の障害者や成人の障害者がどの様な生活をし、どの様な悩みや苦労を抱えているのか理解をしているでしょうか?

今まで暮らしてきた地域に、障害者がいないわけではないのに、全くと言っていいほど障害を持つ子供や大人と接する機会がなかったと思う方も多いとおもいます。教育を受ける権利は全ての人に保障された普遍的な人権ですが、多くの障害者は1979年まで義務教育さえ受けることが出来ませんでした。また、養護学校に就学することが出来ても、障害のない子供とは分けられ卒業後の進路も非常に限定されたものでした。

「法定雇用率2.3%

障害者の就労については、現在、障害者雇用促進法により法定雇用率(社員数に対し雇用するべき障害者の割合)は「2.3%」と定められていますが、特例子会社など特定の配属先や健常者とは待遇の異なる雇用条件や業務内容なども多くあります。因みに海外の法定雇用率を見るとフランス「6%」、ドイツ「5%」、アメリカ「7%(連邦政府と1万ドル以上の契約を締結する企業に対し努力目標を設定)」となっており大きく差があります。

また、企業の中には「共生社会の実現」という理念を忘れて、法定雇用率を満たすための消極的な採用もあります。「障害者とどう接したらいいか分からない」といった声をよく聞きますが、同じ地域に暮らしながら幼少期から全く動線が交わることのない「二重構造社会」ではこの問題は必然といえます。

この様な偏りは、健常者が障害者の生活や思いを知る機会や不自由さを克服することのできるアイデアの閃めく機会を失っていると言えるのではないでしょうか。

「インクルーシブな社会」

いま、世界の潮流はインクルーシブな社会を目指して動き始めています。インクルーシブとは「包括的」という意味であり、障害のあるなしに関係なく誰もが孤立しない社会の実現へ向けた取り組みが動き始めています。

しかし、このような社会を実現させるには、一個人や一企業が簡単に行えるものではありません。行政と企業による積極的な環境づくりや新しい価値観を広めるための働きかけが必須となります。障害者にとって働く環境が整っていなければ、能力や熱意があっても活躍できる場所はないのです。

また、障害者の能力を発揮できる環境を整えるには、健常者と共に整え働くことが最も重要なことではないでしょうか。なぜなら、現状の問題点を共有し共通の課題として取り組むことで、さらに多様性のある豊かな社会へと、より包括的な未来へと発展していくからです。

「持続可能な制度を目指す」

さらに、多くの障害者が働くことが出来るようになれば、納税が発生します。今までは、行政からの給付や助成など公費の支出が多かった部分に対し、障害者が納税を行うことにより、持続可能な制度や財源へと好循環が生まれるのではないでしょうか。

「ともに進む未来」

障害の有無に関わらず、人々が日常的に抱えている悩みや苦労を理解することは簡単なことではありません。だからこそ、行政と企業がインクルーシブな社会を推進し、積極的な取り組みを広く発信することは、より多くの高齢者や障害者の社会参加を加速させるきっかけになり、障害の有無に関係なく誰もが孤立しない社会の実現につながると考えるのです。

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