【介護への危機感を、改定の中身で示せるか】

■首相が語った「強い危機感」

高市首相は10月13日の衆院予算委員会で、介護事業所や施設の経営について、人手不足や物価上昇などによって「非常に厳しい状況に直面している」との認識を示しました。

首相はまた、介護を必要とする人にサービスを届ける提供体制が今後も維持できるのかという点について、昨年の就任時から「非常に強い危機感を持っていた」と述べています。そのうえで、来年度の介護報酬改定(介護サービスの公定価格を国が見直すこと。原則3年ごとに行われる)では、物価や賃金の上昇を適切に反映し、「他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る」と明言しました。

また、翌14日の同委員会では、障害福祉サービス報酬(障害のある人への支援サービスに対して国が定める報酬)についても、職員の処遇改善を図る方針とあわせて、支援の質を適切に評価し「メリハリの効いた報酬体系」とする考えを示しています。

■介護は家族の仕事と暮らしを支える土台

介護職は、高齢者や障害のある人の暮らしを支える専門職です。しかし、支えているのは当事者だけではありません。

少子高齢化が進む日本では、高齢者を支える現役世代の数が年々少なくなっています。現役世代が多ければ、介護の役割を多くの人で分かち合うことができます。しかし現役世代が少なくなれば、1人ひとりが担う役割は重くなり、仕事と介護の両立が難しくなります。その結果として起きているのが、介護離職(家族の介護のために仕事を辞めること)です。

介護離職が増えれば働き手が減り、介護保険を支える保険料や税収も減っていきます。介護を必要とする人が増える一方で、それを支える力は弱まっていくという悪循環が起こるのです。団塊の世代(1947〜1949年生まれの世代)がすべて75歳以上となり、高齢化が大きな山場を迎えている今、高齢者を社会全体で支える仕組みを整えることは喫緊の課題です。

介護サービスは、介護を受ける当事者だけでなく家族も支え、家族が担っている役割を分かち合うことで、介護離職をせずに済むように、そして家族にしかできない関係を守るための社会の土台なのです。

■問われるのは制度の中身

これほど大きな役割を担っている介護ですが、首相が述べた「強い危機感」の背景にあるのは、事業所の経営が厳しく、介護を届ける体制そのものが揺らいでいる現実です。つまり、問われているのは制度の中身そのものなのです。

介護福祉士という国家資格があるにもかかわらず、介護職の賃金は全産業の平均を大きく下回り、仕事の専門性や責任に見合った評価や処遇がされてきませんでした。このズレが、経営の厳しさや人手不足の大きな原因の一つとも指摘されています。

夫のリハビリ生活を支えながら首相としての激務をこなす高市首相が、介護への危機感を自らの言葉で語った意味は非常に大きいと思います。

介護福祉士という国家資格にふさわしい評価を、制度の中でどう実現させるのか。「他職種と遜色のない」という言葉が、来年度の改定で数字として示されるのか。

少子高齢化社会を突き進む日本だからこそ、誰1人として、介護や介護離職に無関係な人はいません。だからこそ、社会に介護をどう実装していくのかを、身近な問題として考え、注意深く見届ける必要があるのではないでしょうか。

〈介護ニュースJOINT〉

https://www.joint-kaigo.com/articles/49427/

https://www.joint-kaigo.com/articles/49462/

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