【永住許可の厳格化から考える、生活保護と外国人政策のあり方】

出入国在留管理庁(入管庁)はガイドラインを改定し、外国人の永住許可要件が10月1日から厳しくなりました。今回の改定で厳しくなったのは、主に収入・年金・日本語・制度理解・配偶者特例・手数料の6点です。永住許可の3つの法定要件(素行が善良であること、独立して生計を営めること、永住が日本の利益になること)のうち、「素行が善良であること」は変わっていません。

【2026年10月1日から適用】
* 収入要件:世帯の年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を継続して上回っていること。
* 公共の負担になるおそれ:生活保護など公共の負担になるおそれがある場合は、審査で不利に評価(消極評価)。
* 申請手数料:1万円から20万円に引き上げ。
* 審査の姿勢:永住は「特に慎重な審査」が必要だと初めて明記。

【2027年4月1日以降の申請から適用】
* 年金要件(新設):将来の年金見込み額が、その年収で厚生年金に30年加入した場合の水準に達していること。目安は年130万〜160万円程度で、不足分は預貯金などの金融資産で補うことも認められます。
* 日本語能力(新設):B1相当(日本語能力試験でN3上位〜N2程度)。
* 国益要件の明確化:国益要件(永住が日本の利益になるかを判断する要件)として、「積極的かつ具体的に日本に利益をもたらす」ことを求める。
* 制度やルールの理解:日本の制度やルールの理解が乏しい場合、学齢期の子どもを学校に通わせていない場合は、審査で不利に評価。
* 配偶者特例の厳格化:「婚姻3年・在留1年」から「婚姻5年・在留3年」に変更。

■厳格化の背景

2025年末時点で、日本に住む外国人は約412万人、そのうち永住者は約94万人に上ります。永住者が増える中で、永住資格の厳格化に至る背景として、次のような問題が指摘されてきました。

①生活保護の受給
入管庁の調査では、永住者の受給率は約1.96%で、日本全体の保護率(総人口に対する受給者の割合)の約1.62%を上回っていました。また、日本の受給者は高齢者が多くを占めていますが、現役世代が中心の永住者でこの水準にあることは軽視できない問題となっています。ただし調査対象は永住者の一部にとどまり、全国的な実態把握が求められます。

②公的義務の不履行
税金や社会保険料を納めない人がいることが問題視され、2024年の入管法(出入国管理及び難民認定法)改正では、故意に納付しない場合に永住許可を取り消せる制度が設けられました。

③社会への適応
日本語がほとんど話せない人や、日本の制度やルールを理解していない人、学齢期の子どもを学校に通わせていない人がいることも指摘されました。

こうした問題を受け、入管庁は将来の生活保護受給につながらないよう収入と年金の基準を設け、日本語能力や制度の理解も審査で重視することにしました。2026年4月には帰化の居住要件も「5年以上」から「原則10年以上」に引き上げられており、政府全体として、外国人の定住のあり方を見直す流れの中にあります。

■永住は「資格」であって「権利」ではない

まず前提として確認したいのは、“永住は国が審査の上で認める「資格」であり、外国人が当然に持つ「権利」ではない”ということです。期限のない在留を認める特別な資格だからこそ、この国で自立して暮らすことのできる基準を満たす者に資格を与えることは、至極真っ当なことではないでしょうか。そしてそれは、受け入れる社会としての責任であり、本人のためでもあります。

■法律と運用の「ねじれ」

生活保護法は、対象を「国民」と定めています。さらに、2014年の最高裁判決も、外国人には同法に基づく受給権がないと判断しました。にもかかわらず、現状は永住者などに生活保護が支給されています。

では、なぜ外国人への生活保護が支給されるようになったのでしょうか。
はじまりは、1954年、旧厚生省が戦後日本国籍を失った旧植民地出身者への応急措置として、生活保護を認める通知(行政機関が出す指示文書)を出したことでした。そして、その措置を「当分の間」としたのです。

しかし、通知が出されてから70年が過ぎた今も「当分の間」は見直されず、対象には特別永住者(戦前から日本に住む旧植民地出身者とその子孫)や認定難民だけでなく、その後に来日した永住者や定住者も含まれています。保護の根拠が全く異なる人々を、一括りに扱っているのです。

■他国はどうしているのか

ドイツは永住に法定年金60か月の納付とドイツ語B1(中級)を求め、フランスも2026年から語学要件を引き上げて市民試験を義務化しました。モナコでは、実務上50万ユーロ(約8,000万円)以上の預金が居住の条件とされ、更新のたびに資金の証明が求められます。多くの国が「自立して暮らせること」を受け入れの前提にしています。

■困窮者を出さない制度設計を

今回の厳格化は、入口で将来の困窮リスクを減らすもので、その方向は評価できます。しかし審査で見るのは申請時点の状態にすぎません。永住が認められた後に職を失っても、資格はそのまま残ります。また、永住者の在留カード(中長期在留者に交付される身分証明書)は7年ごとに更新されますが、その際に生計状況の確認はなく、制度設計に穴があるのは否めません。

永住が資格である以上、在留カードの更新の際にも、その都度十分な預金を保有し、その他の基準を満たしていることを確認することは、正当ではないでしょうか。

■国会で正面から議論を

問題の核心は、外国人の生活保護という重大な事柄が、70年前の通知という「法律ではないもの」で運用され、根本的に見直されないまま続いてきたことにあります。

生活保護は日本国籍を持つ人に限るべきだと考えます。条約上の義務がある難民や、歴史的経緯のある特別永住者を特例として扱うことはあり得ても、根拠のまったく異なる永住者や定住者を同列に扱うことに、正当性はありません。

誰をどのような根拠で守るのかは、行政の裁量ではなく、国会が法律として決めるべき事柄です。

永住という特別な資格だからこそ、私たちの国への理解と善良な人柄、そして自立を継続し暮らせる人を国の制度のもと受け入れる。そのための制度づくりを、私たちはいつまで先送りにするのでしょうか。

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