2025年国勢調査(5年に1度、国内に住むすべての人を対象に国が行う統計調査)の確定値が公表されました。日本の総人口は1億2297万人で、5年前より317万人、2.5%の減少です。日本人が3.5%減る一方、外国人は39.8%増の384万人と過去最多になりました。都道府県で人口が増えたのは東京都だけで、神奈川県を含む7県が増加から減少に転じています。
この流れの中で、私たちが暮らす藤沢市はどうなっているのでしょうか。
■県が減る中で、藤沢市は増えている
神奈川県が5月に発表した速報値(確定前の暫定的な集計結果)によると、県の総人口は919万3657人で、1920年の調査開始以来初めて減少に転じました。県全体で4万3680人が減る中、藤沢市は6989人増えて44万3894人となり、増加数は県内3番目、世帯数の増加は1万103世帯で県内トップでした。市の月次推計でも、2026年8月1日現在の人口は44万4372人で、7月の1か月間に167人増えています。
市の担当者は、辻堂・鵠沼・湘南台などでマンション開発が進み、コロナ禍以降は都内から30〜40代の子育て世帯の移住が増えたと説明しています。学校の過大規模化が課題になるほど人が集まってきたのは、こうした背景があるからです。
■増加を支えているのは「転入」だけ
ただし、数字の中身を見ると楽観はできません。2025年の1年間に藤沢市で生まれた子どもは2632人、亡くなった方は4556人でした。つまり、自然増減(出生数から死亡数を引いた人口の増減)では、すでに約1900人の減少です。それを社会増減(転入数から転出数を引いた人口の増減)のプラスが上回っているからこそ、人口が増えているのです。
市の将来人口推計では、総人口は2035年に約45万4000人でピークを迎え、その後は減少に転じる見込みです。藤沢市の人口減少は「すぐ」ではないかもしれません。しかし、転入の勢いが鈍った瞬間に減少へ転じる構造であることは、冷静に受け止めておく必要があります。
■縮む時代に備える
人口減少を抑えて緩やかにするために、住まいの確保やインフラの整備といったことをただ言うのは簡単です。しかし、国の人口減少という大きな波に抗い、人口の「数」を守る努力には限界があります。減少に転じた後も暮らしの質を保てるよう、生活拠点の集約や公共施設の複合化など、縮む時代に備えた街の形を今から準備しておくことが大切ではないでしょうか。
■唯一無二の街にするのは「人」
では、人が「住み続けたい」と思える地域の条件とは何でしょうか。私の場合、美しい景色や過ごしやすい気候もありますが、1番は“人”です。若い頃は、いろいろな場所に住んでいたのですが、藤沢は土地柄なのか、人当たりに裏表がないように感じます。私にとってそれは大きな魅力に感じました。
暮らす場所の条件として、便利だから、海に近いからという理由だけでは、もっと良い条件の場所が現れれば、人は流れていってしまいます。その街に長く居続けたいと思わせるのは、そこに暮らす人と人との関係ではないでしょうか。人口が減っていく時代だからこそ、心の通う関係性の大切さを、もう一度見つめ直す時期に来ているのではないかと思うのです。
私は車椅子を使う重度の障害者として、街で人に助けていただくことが何度もありました。だからこそ、周りの人を気にかけ、助けることにも助けられることにも壁を作らない関係が、一般の人々の間でも日常的に広がってほしいと願っています。そうした関係があれば、問題があっても大きくなる前に、周りの協力で解決できることも増えるのではないでしょうか。
出会えば挨拶をしたり、地域の子供たちを見守ったり、困っている人がいたら手を差し伸べたり、周囲に気をかけられる人が多くいることは、地域にとって大きな財産だと私は実感しています。そして、そのような人と人とのつながりこそが、唯一無二の住み続けたい街にするのではないかと思うのです。
■人口減少は、市民一人ひとりの問題
市の人口の推移は、市の税収に直結しており、行政サービスの運営に大きく影響を及ぼします。高齢化で働く世代が減れば税収は減り、医療・介護・福祉の支出は増えます。実際、人口が増えている今でも、市は対策を講じなければ毎年度財源不足が生じ、2032年度にはその額が約186億円に達すると見込んでいます。その不均衡を補うためには、サービスを見直すか、市民の負担を増やすか、難しい選択を迫られることになります。つまり、これは、市民全員が無関係ではいられない問題なのです。
10年後、20年後の藤沢市がどのような姿であってほしいのか、私たち市民一人ひとりが考えるときなのかもしれません。