藤沢駅南口の391地区(フジサワ名店ビル、ダイヤモンドビル、CDビルの3棟が立地する再開発対象区域)で、新たな再開発ビルの完成時期が2032年から2035年へと3年遅れる見通しとなりました。物価高騰や人件費上昇で事業費が当初の約1.5倍に膨らみ、準備組合が計画見直しを決めたためです。
■数字が示す構造的な限界
総事業費は当初の約270億円から約400億円へ膨張し、収支は約80億円のマイナスになる見通しであることが昨年10月に判明したといいます。この事業は、建て替えで新たに生まれる床である「保留床」(従前の権利者への配分を超えて生じる余剰の床。売却して事業費に充てる)の売却収入で費用をまかなう仕組みです。建設費だけが上がれば、その穴は埋まりません。準備組合はさらなる延期の可能性にも言及しており、これは一組織の努力で制御できる問題ではなく、制度そのものが抱える脆さの表れといえます。
■残されるのは安全の空白
私はノスタルジックな現在の名店ビルの雰囲気が好きなのですが、それとは気話して考えなければならないのは安全です。3棟は老朽化が進み、2017年に藤沢市が公表した耐震診断で、名店ビルとCDビルは震度6強以上の地震で「倒壊または崩壊の危険性が高い」とされました。公表から9年、そして今回、3棟の営業終了時期も2028年3月から2031年へ延期されます。多くの市民が日々出入りする建物であることを考えると、優先すべきは「安全性」なのですが、建築費の目処が立たない現状は「八方塞がり」といえます。
■問うべきは行政の責任
準備組合を責めたいのではありません。「打つ手がなく断腸の思い」という言葉に偽りはないでしょう。問うべきは、遅れが前提となった世界で行政が何をするかです。完成を待つあいだ、危険と診断された建物をどう扱うのか。都市計画決定を行った藤沢市には、事業を見守る立場を超えた責任があるはずです。
新たな計画の発案は2027年度とされ、内容はまだ流動的です。裏を返せば、市民が議論に加われる時間が残されているということでもあります。立派な建物が10年後に建つことと、いま毎日そこを通る人の安全が守られることは、別の問題です。正直なところ、3年の場所だ。ところで何かが大きく改善するようには見えません。この3年を、あなたはどう受け止めますか。